Topics & Press 着床前診断ネットワークのお知らせ

名古屋市大の杉浦真弓、鈴森薫両氏の捏造論文と日本産科婦人科学会の会告について

2016.03.12

名古屋市大の杉浦真弓氏(教授)と鈴森薫氏(元教授)はHuman Reproductionという雑誌の2005年、 20巻, 3267–3270ページに論文を発表して、均衡型相互転座を保因する不育症の方が着床前診断を受けた場合と受けない場合で、累積生児獲得率が殆ど違わないと論じています。 相互転座の着床前診断を受けた患者のデータはESHRE Preimplantation Genetic Diagnosis Consortium: data collection III. Hum Reprod 17,233–246, 2002を引用しており、患者数を25人としておりますが、実際にはこの論文には患者数は書かれていません。該当する統計に25という数字はありますが、これはNo. infertile(不妊の数)という意味で、相互転座の着床前診断を受けた採卵周期の中で患者が不妊症だった場合の数です。私はESHREのデータ収集に協力したことがあり、その時のデータ入力票にはInfertility (no ability to conceive without IVF) 「不妊症(体外受精以外で妊娠する能力が無い)」と明記されています。 相互転座で着床前診断を受けた人が全員体外受精でないと妊娠できないような不妊症という事はあり得ず、実際の人数は記載されていませんが、25人という杉浦氏らの論文の人数に根拠がないとは断言できます。 全く関係の無い数字を無理矢理、患者数に捏造して「累積生児獲得率」という数字を計算し、自分の集めた自然妊娠のデータと同じだったという論文を書いても、これは何の意味も無い捏造論文でしか有りません。上述ESHREの論文には相互転座で着床前診断を受けた患者の内、不妊症の者はたった25人だけであった(only 25patients were infertile)との記述があり、私の推測では相互転座の着床前診断を受けた方は25人よりずっと多く、一人あたり着床前診断を受けた回数は杉浦氏らの言うように3.8回などではなく、1〜2回に過ぎないのではないかと思われます。1年間に1〜2回の着床前診断を受けたグループと、長い間妊娠にトライして、1回以上自然妊娠に至ったグループを比較しても何の意味も無いことは明らかです。 さらにデータを比較する際には母数を同じにする必要がありますが、ここでも杉浦氏らは姑息なデータの操作をしています。すなわち、自然に経過を見たグループでは、次回に妊娠した者のみを母数にしており、比較するのであれば着床前診断を受けたグループでも妊娠した者のみを対象にする必要がありますが、杉浦氏らは妊娠しなかった者も対象に含めています。これでは公正な比較は出来ません。着床前診断を受けて妊娠した者では流産率が10〜20%に下がるので(私どもでは10%以下)、1回の妊娠での生児獲得率は80〜90%になり、杉浦氏らが報告した何回もの妊娠、流産を経ての68.1%よりはずっと高くなります。 杉浦氏と鈴森氏は適当な数字を見つけて着床前診断についての1年間の根拠の無い数字と自然経過についての何年ものデータを無理矢理比較して累積胎児獲得率というあまり意味の無い数字について違いが無いという全く根拠の無い結論を導いています。 なぜ、このような数字の操作をした論文を書いたのかについては推測するしか有りませんが、当時、均衡型相互転座を保因した習慣流産の患者様が日本産科婦人科学会を相手に損害賠償訴訟を起こしており、着床前診断の優位性を否定する必要があったのが一因だと思われます(この訴訟では損害賠償は認められませんでしたが、着床前診断を受けることに何らの法的問題は無いことが最高裁で確定した判決で明らかになっています)。しかしながら、日本産科婦人科学会は転座保因者の着床前診断を「臨床研究」として実施することも予定しており、このためには着床前診断が自然妊娠に劣るという結論も好ましくなかったと思われます。 実際の所、日本産科婦人科学会は2006年に転座を保因する習慣流産患者様にも着床前診断が受けられるよう会告を修正いたしておりますが、その際に同学会のウエブサイトに掲載された「着床前診断に関する見解についてと」いうPDFファイルには上記捏造論文の共著者である鈴森薫氏が作成者であるとプロファイルに記されております。

また、鈴森薫氏は転座等が原因で習慣流産に悩む患者様に集まって頂いて「着床前診断を推進する会」を開催した際に全く虚偽の発言をして私の名誉を棄損しようと致しました。鈴森氏は日本産科婦人科学会の倫理委員を務めていたのですが、このようなマスメディアの皆様もいらっしゃる公開の場で真っ赤な嘘をつく人間に倫理を語る資格があるとは全く思えません。このように人前で嘘をつくことが平気な人物が書いた捏造論文に依拠して、その本人が作成に深く関与した日本産科婦人科学会の着床前診断に関する会告に倫理的、法的正当性が無い事は明白です。

なお、鈴森薫氏が退官後立ち上げた会社は、血液でダウン症などを調べる新型出生前診断や、SNPアレイという方法での着床前診断を取り扱っている米国ナテラ社と提携しています。

着床前診断を推進する会での日本産科婦人科学会倫理委員、名古屋大市立大学教授、鈴森薫氏の虚偽発言(背景に聞こえる声)