着床前診断 Q&A着床前診断 Q&A

着床前診断に関するよくあるご質問についてQ&Aにまとめていますのでご覧ください。

着床前診断はだれでも受けられるのですか?
balloon

体外受精が適用で不妊症の方、転座などの染色体異常のある方、習慣流産の方、遺伝病を避けたい方、などが対象です。

着床前診断は、もともとは親から子どもへと遺伝する「遺伝病」を避けるために開発された医療技術です。
遺伝病には、両親のどちらかに特定の疾患遺伝子があると発症する優性遺伝病(筋硬直性ジストロフィー症、マルファン症候群、神経繊維腫症など)と、両親ともに疾患遺伝子がある場合に発症する劣性遺伝病(嚢胞性線維症、色素性乾皮症、テイ・サックス病など)があります。
その後しだいに、着床前診断によって流産を予防できることが明らかになってきました。
流産の原因の3分の2は受精卵の染色体異常です。着床前診断で染色体異常を持つ受精卵を見分けて、妊娠を継続できる可能性の高い受精卵を子宮に戻せば、妊娠率を上げて流産率を下げることができます。
現状では、着床前診断は、体外受精の妊娠率を上げる目的、転座や数の異常などの染色体異常による流産を予防する目的や遺伝病を避けたい場合に、おもに用いられています。
なお、私どもでは遺伝病を避ける目的の着床前診断は現在実施致しておりません。

受精卵の遺伝子はすべて同じではないのですか?
balloon

夫と妻の染色体の組み合わせが多数できるので、すべて同じではありません。

人間の染色体は、通常は2本で1対となっていて、全部で23対46本あります。1本が母親由来、ほかの1本が父親由来です。卵子や精子がつくられるときには、2本で1対の染色体が1本ずつに分かれて、染色体数は半分の23本となります。これを減数分裂と呼びますが、この際父親由来の染色体と母親由来の染色体が、相同の場所でつなぎ替わる現象が起こります。これを組み換えと呼び、組み換えが起こった場所の前後で父親由来の染色体と母親由来の染色体が切断、連結され入れ替わります。このためにさまざまな種類の染色体(および染色体に含まれる遺伝子)を持った精子や卵子ができます。また、減数分裂に際しては異なった組み合わせの染色体を持つ精子や卵子がつくられます。受精すると、卵子と精子の染色体が対になって、ふたたび23対46本に戻りますが、卵子や精子の染色体にさまざまな組み合わせができるため受精卵の染色体は同じにはなりません。
なお、転座や欠失などは組み換えの失敗で起こると考えられています。
一方、減数分裂がうまくいかず、1本ずつ分かれるはずのペアのうち、いくつかが分かれられないことを染色体不分離と呼びます。染色体不分離が起こると、特定の染色体が2本ある精子や卵子ができてしまいます。この特定の染色体が2本ある精子や卵子が正常な精子や卵子と受精すると、その受精卵は同じ染色体を3本持つことになってしまいます。これをトリソミーと呼びます。トリソミー以外の染色体の数の異常も多くは不分離が原因です。
着床前診断では、染色体異常の受精卵を見分けて、これを回避します。

胚盤胞から細胞を3〜5個採取しても問題はないのですか?
balloon

その後の受精卵の発育に悪影響を与える恐れはほとんどありません。

米国での研究で数十から100以上の細胞からなる胚盤胞と呼ばれる段階まで成長した受精卵から胎盤になる部分の細胞を数個採取しても、着床率にもほとんど影響を与えないことがわかっています。
ヨーロッパ不妊学会その他の研究で、着床前診断の新生児への安全性は確認されています。

アレイCGH法とPCR法の違いは何ですか?
balloon

アレイCGH法は染色体異常、PCR法は遺伝病を調べるために用いる検査方法です。

アレイCGH法は、24種類の染色体すべてについて、数の異常や構造の異常があるかどうかを調べます。
構造の異常については、染色体の一部が失われたり(欠失)、逆に一部が増えたり(重複)する現象が起きているかどうかなどもわかります。
PCR法は、遺伝子を何万倍にも増やしてから解析する方法です。特殊な処理を行うと、遺伝病に関連した遺伝子の特定部位の塩基配列(遺伝子の暗号)を解読することができます。これをもとに、受精卵の遺伝病の有無を診断します。

受精卵の染色体を誤診する可能性はありますか?
balloon

染色体を正しく診断できる確立は97%以上です。

アレイCGH法で受精卵の染色体異常の有無を、正しく診断できる確率は97%以上です。
診断がはっきりしない受精卵は原則として子宮に戻しませんから、理論的には診断をまちがう可能性はさらに低くなります。しかし、受精卵から採取する少数の細胞から得られるきわめて微量のDNAを何万倍にも増幅して診断する着床前診断では、増幅時のエラーの可能性を完全には排除できず、まちがいの可能性はゼロではありません。染色体異常の赤ちゃんが生まれる確率は、着床前診断を受けない場合に比べて30分の1以下になりますが、わずかに残っています。
また、流産の原因には染色体異常以外のものもあるので、着床前診断を受けても流産が起きる確率は10%ほど残ります。

胚移植しない受精卵はどうなるのでしょうか?
balloon

ご夫婦の意思で、凍結保存などを行います。

染色体が正常と診断された余剰胚は、ご夫婦の意思で凍結保存などを行います。
また、染色体が異常な受精卵や、診断ができなかった受精卵についても、ご夫婦の意思で凍結保存するか廃棄するかを決定します。

体にはどのような負担がかかるのでしょうか?
balloon

排卵誘発剤の副作用が起きたり、採卵時に出血したりすることがあります。

着床前診断では、通常は排卵誘発剤を使って、卵胞をたくさん成熟させる「排卵誘発」を行います。
薬に敏感に反応するタイプの方の中には、排卵誘発剤を使うと期待した以上の数の卵胞が成熟して、おなかの張り(腹部膨満感)、腹痛や腰痛、吐き気、尿量の減少などの副作用を生じることがあります。
この副作用を「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」と呼んでいますが、最近採用しているアンタゴニスト法や低刺激法(クロミフェン法など)による卵巣刺激ではほとんど発症しませんので、さほど心配はいりません。
また、採卵時には、経膣超音波で卵巣の様子をみながら、細い針を膣から卵胞に刺して、卵子を採取します。針を刺すので多少の出血がみられます。感染を予防するために、抗生物質の投与を行います。

出生後に異常がみられた場合は相談できますか?
balloon

いつでも相談に応じます。

着床前診断の安全性は、体外受精と同じ程度とされています。
これまでに3万人以上の赤ちゃんが生まれ、着床前診断が原因となる異常の発生は1例も報告されていませんが、1990年に最初の赤ちゃんが誕生した比較的新しい医療技術なので、長期的な影響がないとはいい切れません。
この診断法を受けて誕生したお子さんについて、相談があればいつでも応じます。
着床前診断を受けたことをお子さんに伝えるかどうかは、ご夫婦の意思しだいです。
また、着床前診断を受けて生まれたお子さんの染色体検査についても、ご夫婦と、お子さんが意思表示の可能な年齢になっていれば、お子さんの意思しだいで対応します。

着床前診断の費用はどのくらいですか?
balloon

体外受精の費用に約12〜70万円の加算になります。

着床前診断は最新の診断法であることから、健康保険は適用されません。
体外受精の費用とは別に着床前診断の費用が必要で、平成25年7月時点では診断の種類や診断する受精卵の数により約12〜70万円の加算になります。