大谷医師からのメッセージ大谷医師からのメッセージ

2005年に、習慣流産を予防する目的の着床前診断を当院で受けた赤ちゃんが国内で初めて誕生してから、これまでに多くの赤ちゃんが生まれました。

着床前診断を受けられるのは、長年の不妊症に悩まれた方、流産や死産を何回も繰り返されたご夫婦が少なくありません。そのような苦難を乗り越えた方々が、初めて我が子の産声を聞いて、身動きする姿に感動して、涙を流されるようすを拝見していると、新しい命を育むお手伝いをすることができて本当に良かったと心の底から思えてきます。

着床前診断(受精卵診断)は、妊娠が成立する前、つまり体外受精でできた受精卵を培養して子宮に戻してあげる前に、受精卵の染色体や遺伝子に異常がないかどうかを調べる医療技術です。

着床前診断を受けると、もともと染色体異常で着床できない受精卵、あるいは流産や死産となる運命の受精卵を見分けて、胎児として発育できる受精卵だけを子宮に戻すことができます。

しかも着床前診断の技術は日々進歩を続けています。最近実用化されたアレイCGH法というDNAチップを用いる画期的な方法により、受精卵の染色体24種類のすべてを高い精度で検査することが可能になりました。

米国生殖医療学会(ASRM)の機関誌であるFertility and Sterilityは2013年9月号で新型着床前診断(アレイCGH法)の有効性を示す多数の論文で構成された特集を組んでいます。この中には新型着床前診断で体外受精・顕微授精の着床率・出産率が上がることを、医学論文では最も信頼性が高いとされるランダム化比較試験で証明した論文も掲載されています。このことからも新型着床前診断の有用性が米国で広く認知されていることがわかります。

着床前診断は特に異常がないのにこれまで体外受精や習慣流産などで悩まれていた方、卵子の老化で不妊治療がなかなか成功しない方、あるいはご夫婦の染色体異常で流産を繰り返してきた方、ご夫婦の遺伝子に変異があり妊娠をあきらめていた方に、新しい命を育むお手伝いをすることができる技術ともいえます。

このような悩みを抱えている方々に着床前診断をよく知っていただき、選択肢の一つとして考えていただければと思います。