着床前スクリーニングとは着床前スクリーニングとは

出生前診断との違い

出生前診断とは、妊娠中の胎児の異常を調べる検査です。
染色体異常を診断するために、最近、国内で最も頻繁に行われている出生前診断は、NIPTと呼ばれる母体の血液で胎児の染色体の異常を調べる検査です。この検査で異常が疑われた場合には確定診断の目的で、妊娠15週前後に胎児の周りを包む羊水に針を刺して吸引して、その中に含まれる胎児の細胞の遺伝情報を検査します。(羊水検査)。
その他、絨毛検査、超音波検査なども出生前診断に含まれます。
また、遺伝疾患の診断の目的では羊水検査が最も多く行われています。

他方、着床前の受精卵の検査は、夫婦のどちらかが遺伝性の病気の保因者である場合に受ける着床前診断と、夫婦には原因の無い偶然起きる異常を調べるための着床前スクリーニングの2種類に分類されます。

着床前診断は受精卵が子宮に着床して妊娠が成立する前に、受精卵の染色体や遺伝子に異常がないかどうかを調べる医療技術です。
妊娠が成立する前に受精卵の段階で異常の有無を調べるのですから、出生前診断のように産むべきか、それとも中絶するべきかと、夫婦が苦渋の選択を迫られることはありません。
羊水検査のように検査をすることによって発生する恐れのある流産の危険ももちろんないのです。

この医療技術によって、染色体異常や遺伝子疾患の可能性を考えて、子どもを持つことをあきらめていた夫婦が妊娠の決断をすることも、以前よりは容易になりました。
内閣府の総合科学技術会議の一組織である生命倫理専門委員会の最終報告では、着床前診断の利点として

  • 母親の負担の軽減
  • 遺伝病の子を持つ可能性のある両親が実子を断念しなくてすむ
  • 着床後の出生前診断の結果として行われる中絶手術の回避

を挙げています。

着床前診断は、羊水検査よりもずっと早い段階での検査を可能にして、女性の負担を減らそうという医学界の努力によって開発された技術です。

一方、着床前スクリーニングは、着床前診断の一種ではあるのですが、不妊症、不育症の方に着床しやすくて流産しにくい、染色体異常の無い受精卵を選んで子宮に戻してあげる技術です。世界的に、現在実施されている着床前診断の大多数は染色体数を検査する着床前スクリーニングが占めています。
受精卵はかなりの割合で染色体異常が認められ、これを子宮に戻しても、着床してくれないもの、流産してしまうものが殆どです。

スライド1

従って、染色体異常の無い受精卵を選んで子宮に戻してあげることで、体外受精の着床率が上昇し、流産率が低下します。
私どもで2016年から導入している、次世代シーケンサー(NGS法)とロボットを使った着床前スクリーニングでは受精卵1個あたりの着床率が70%以上になり、流産率が10%以下になっています。

なお、21番染色体が3本の場合にはダウン症児として生まれて来る場合がありますが、21トリソミーの受精卵の20%程度しか着床せず、また、ダウン症の妊娠の79%は流産に終わると報告されています。

スライド2

私どもの着床前スクリーニングの経験では検査した受精卵の約1%にしか21トリソミーの染色体を持つものは認められず、しかもその20%しか着床せず、着床しても79%は流産してしまいます。ダウン症と診断された妊婦様の97%が中絶を選んでいるNIPT(血液検査の出生前診断)とは違って、着床前スクリーニングはダウン症を排除する目的とはほど遠く、命の選別には当たりません。