不妊治療で妊娠されても、流産してしまうと、悲しみのどん底に突き落とされてしまいます。
流産が女性の心身に大きな負担となることは言うまでもありません。流産を防ぐ治療法があれば、何とかして助けてあげたいと思うのは産婦人科医として当然持つべき良心ではないでしょうか。
流産は極めて高い頻度で、染色体異常が原因となっていることがわかっています。特に40歳以上の方では流産の80%以上は染色体異常が原因です。
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そして、染色体異常がある受精卵は極めて高い頻度で流産、死産につながります。実際、流産胎児の染色体異常の頻度は71%もあるのに、出生児における染色体異常の頻度は0.1%くらいですから、染色体異常妊娠の98%~99%は流産してしまうことがわかります。
染色体異常 | 新生児(85%)に おける頻度 |
自然流産(15%)に おける頻度 |
認知された全妊娠 における頻度 |
流産、死産の割合 |
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常染色体トリソミー | 0.12% | 3.92% | 4.04% | 97% |
21トリソミー | 0.10% | 0.37% | 0.47% | 79% |
18トリソミー | 0.013% | 0.21% | 0.223% | 94% |
13トリソミー | 0.004% | 0.20% | 0.204% | 98% |
45,X | 0.004% | 1.42% | 1.424% | 99.7% |
3倍体 | 0.002% | 1.22% | 1.222% | 99.8% |
流産胎児に染色体異常が多いのはおわかり頂けたと思いますが、実は、一般の受精卵にも想像を絶する頻度で染色体異常が認められます。30歳以下の方で30%程度、35歳の方で40%程度、42歳の方ですと80%位に染色体の異常が見つかります。
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こういった染色体異常を持つ受精卵はどうなるかというと、殆どは臨床妊娠にさえ至らず、着床しないか、あるいは、化学妊娠で終わってしまいます。
Munne et al. RBM Online, 2004 |
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この図から、常染色体の異常を持つ受精卵では約90%は臨床妊娠にさえ至らないことがおわかり頂けると思います。しかも、先にお示ししたように、染色体異常を持つ受精卵が、もし、臨床妊娠まで至ったとしても、大半は流産に終わってしまいます。
着床前診断で染色体異常のない受精卵を選んで子宮に戻してあげることによって、体外受精で妊娠された後の流産の可能性を大きく減らすことができます。
また、臨床妊娠に至る可能性の高い受精卵を選んであげることで、体外受精の妊娠率を上げることも可能です。